「・・・間違いなくここね、大分荒らされた形跡があるわ・・・ヒト以外のものに」
『時風境界層の痕跡も確認出来ました。現在他に動体・生命体反応はありませんけど、気をつけて下さいね』
「ありがとう、大丈夫よ。何かあればこの子たちが知らせてくれるわ」
『それにしてもここ、殆どのデータが極秘扱いです。場所も不便だし・・・コンビニも喫茶店も遠いのは嫌ですねー』
「中も所々変わった施設や機材があるわ。資料通りの歴史研究って訳じゃなさそうね。秘密機関?」
『でもお蔭で、まだ警察とかにも連絡行ってないみたいですし、調べる時間も出来ました』
「ゆっくりしてられる訳じゃないでしょうけどね。とりあえず気になるものを適当に回収していくわ。データはそのまま送るから拾って頂戴」
『はい、こっちは昨夜のデータ解析の続きしてるので。何かあったら呼び出してくださいね』
通信が一旦OFFになったのを確認してから、たからはそっとため息を吐き、周囲を見渡した。
「・・・まったく、火事場泥棒もいいところだわ・・・。ごめんなさいね、お線香の一本も上げられないで」
連れて来たグレーテルの鳴声が聞こえる。どうやら奥の部屋で何か見つけたようだ。
仮面ライダー ゲレ 第7話「暗中飛躍 (後編)」「んん・・・そんで誰? そのキバヤシさんって」
「キバヤシ?」
「蟹さん蟹さん、基盤史ですわ。人類基盤史研究所」
「通称はどうやらBOARDって言うらしいけどね。略称って言うよりは基盤って意味の方かな?」
「で、そのボードは結局なんだったんだ」
『ええそれがですね、まだ詳しくは解ってないんですけれど・・・』
「般若、また昼間から・・・あっ!? 駄目なのです! そのお酒は高いのですよー!!」
「ギャキィさんお帰りなさい、お疲れ様です」
「大した相手じゃなかったしなァ。多分すぐまた出る事になるだろうが・・・てぇか、そろそろその呼び方の意味をだなァ・・・」
『えっと、それで進化論以外に生物の盛衰を決定する何かがあったのではないかと・・・』
「たからさ・・・痛っ!? うぅぅ・・・またぶつかっちゃった・・・・・・た、たからさん、バウアーさんが捜してました・・・」
「大丈夫かい? さ、僕の手に捕まって・・・怪我はないかな?」
「・・・入れ違いになったのね、もう一度行ってくるわ」
『説明、続けていいんですかね?』
一夜明け、異常発生区域の調査が一通り完了しても、黒のクロニクルは未だ・・・より以上に騒がしかった。
朝になって全員に状況が知らされた頃になっても、謎の生命体反応の正体は掴めぬまま。
小鳥やバウアー達は昨夜からずっとデータや回収した機材の分析を続けている。
そして・・・
「音撃打! 羅漢怒斗!!」
魔を祓う鬼と化したジャギ――邪鬼が、複数の化猫に拳で"清めの音"を叩き込んでいく。
鬼――人の身を極限まで鍛え上げる事で人でありながら人を超えた力を得た者達。
魔化魍と戦い、清めの音――「音撃」でその妖気・瘴気を清める事で魔を祓う。
猛き鬼に例えられその力を持つ彼らもまた、彼の世界に於ける仮面ライダーに位置した戦士である。
「まったく、モヒカンみたいにわらわら湧いてきやがって・・・ん?」
一通りの化猫を蹴散らしたその時、背後からほぼ一つに聞こえる程の連続した爆音が響いてきた。
振り返れば、青い爆炎を上げて灰となって散って行く数多の異形。
そして一瞬遅れてその場に現れたのは・・・
−TimeOut・・・Reformation− 黒と銀に彩られた一人のライダー。
「そっちも一通り片付いたみたいだな、ジャギ。・・・ったくこいつらまで・・・」
「魔化魍もオルフェノクも、他にしたって・・・なんだってこんな一斉に」
『あんパン娘、ジャギ、二人ともお疲れ様だ。一旦帰還してくれ』
「了解・・・バウアー」
一夜明け、異常発生区域の調査が一通り完了しても、黒のクロニクルは未だ・・・より以上に騒がしかった。
その日の夜明けを待たずして、嘗て戦った、そしてこの世界に現れた"敵"が一斉に行動し始めたのだ。
ゲームとして人々を狩るモノ・・・排除すべき対象を襲うモノ・・・人を喰らうモノ・・・etc...
それぞれに暴れ、喰らい、壊し、殺し・・・またあるモノ達はそれぞれに手を組んだかのように共に人を襲う。
一度に襲い来る数は極端に多くは無い。しかし嘗て無い一斉蜂起に対し、黒のクロニクルは状況も掴めず混乱した。
それは怖れであり哀しみであり不安であり憤りであり戸惑いであり・・・怨嗟でもあったかもしれない。
だがそれでも、だからこそ
「ゲームで奪う…人を狩る…そんなふざけた真似をまた…
私はそんな事、許さない…私達がやらせない……そのゲーム…私が壊す……!」
「カミサマ・・・だっけ? 俺を狙ってくるって事は、この光も人には不要って意味かな
でも・・・・・・アニキから貰った光も! 人間の光も! 神だろうが悪魔だろうが消させるもんか!」
「共に戦う戦友の為にも、貴様等と戦い散って逝った戦友の為にも・・・
そして銃後にある全ての人の日々の為にも! 譬え神とてこれ以上戦火を広げはさせん!」
「さていくら私でも貴方達との語らいは楽しめませんし、何より応えが無いのは切ないものです
ああごめんなさい解りませんよね、つまり簡単に言うとですね? ・・・いくら私でも、問答無用な時はあるって事です」
「あらあら、人の進化なんて気取ってる癖に、か弱い私一人に何人掛かりかしらね
仕方ないから纏めて相手してあげてもいいけど・・・・・・もっと大勢呼ばなくて良かったの?」
「妖怪の癖にやる気出すんじゃねえよ、こっちは殺る気なんか早々出したくねぇんだ
そもそも清めるなんてのは性に合わん。・・・だから・・・そこに並びな、片っ端からぶった切ってやるよ」
「大量過ぎてこれじゃ地引網だよ。格好つかないけど、もっと格好悪い事はゴメンなんだ
趣味じゃないし僕らしくないけど、女の子達を泣かせるのは許せないからね。・・・じゃ、片っ端から一本釣りと行こうか?」
「怖い御伽噺というのはね? 安らかな温もりを確かにする為の、ちょっとした悪い夢なんだ
悪夢が呪いに変わる前に、私達が君達を悪夢の中に送り返してあげるよ。この夜に、悪い魔法は掛けさせない」 彼女達は戦い、護り、退けた。 幸いにも敵が一度に動く数はさほど多くはなかった。
"敵達"の攻勢は散発的に続き、一応の静けさが戻るまでに一週間を要する事となった。
それから更に数日・・・
連日報道された小さな幾つかの怪事件も既に喉元過ぎたのか、街は平穏と喧騒を取り戻していた。
そんな人々の雑踏を離れ、喧騒も遠ざかった街の片隅。
日もそろそろ落ち切ろうという暗がりの中を、ゲレは一人彷徨っていた。
「おっかしぃなー、どこ行ったんだろ?」
始めは何時もの、ほんの悪戯心。ゲレにとっての大切な日常の一ページ。
そろそろ酒でも補充しようと、買い物に出た街の中。ふと見知った後姿を見かけて湧いた悪戯心。
その頭に揺れる尾を確かに追って来た筈だったのだが、少し前にふと見失ってしまったのだ。
「ちぇっ、折角久々に後ろから揉・・・驚かせてやろうと思ったのに」
辺りを見渡してもそれらしい人影は見えず、それどころか人の通る気配もない。
仕方なく、そろそろ諦めるかと踵を半ば返した時。
「やめるです」
然程大きくもない、だが強い声が確かに凛と耳に届いた。
暗い街灯一つきりしかない小さな空き地。昼間に子供が遊ぶかさえ怪しい公園に、対峙する二組の人影があった。
「なんだお嬢ちゃん? そっちの子の知り合い? 妹?」
一組は男が二人。街を見れば一山幾らで歩いていそうな、見るからに中身の薄い二人連れ。
「そんなこと、貴方達に関係ないです」
もう一組は少女が二人。 一人は近くの高校の制服を着た小柄な少女。状況に怯えてか微動だにする様子もない。
そしてもう一人。別の制服を纏った更に小柄な――中学生程だろう――少女が、背後の少女を庇う様に立っている。
「いいからさっさとくだらない真似は止めて、そこを退くです」
その少女は、男二人を前にして怯む様子もなく、目の前の彼らを真っ直ぐ見据えて言い放つ。
「おーおー、格好いいねぇ。これも一種のツンデレ?」
「馬っ鹿、違ぇだろ。ツンデレってのはなぁ・・・」
「あーあー、その話は後々・・・。っと、安心しなお嬢ちゃん。心配しなくたって俺たちは・・・」
「そうそう、問題なし。ペッタンもちっちゃい子も、大好・・・」
「お前達に名乗る名前はなぁぁぁぁい!!!」「がふっ!?」 「ア、アキラーッ!?」
状況を見るやダッシュからの華麗な飛び蹴りを決めたゲレは、そのまま腕組みをして男達の前に立ちはだかった。
「人、俺を! 外道と言う!!」「いってぇ・・・意味わかんねぇこと言いやがって・・・」
「つーかそれ名乗ってるんじゃねぇのかよ!」
蹴り倒された男が立ち上がり、二人で律儀にツッコミを入れながらゲレを睨みつける。
そして、彼等が口を開きかけた、その時・・・!
バリン、と言う硝子が砕けるような音と同時に、突然辺りが闇に包まれた。
「な、なんだ!?」「えっ?」「わっ」「げぶぅっ!?」「ど、どうなってんだ!?」
全く光源がないではないが、突如明かりを落とされ混乱する間に、何者かが縦横に飛びまわり、男の一人を弾き飛ばす。
「やばっ!? 二人とも逃げて!」
「わっわっ、うち鳥目でよー見えんねん」
「ついてくるです、こっち!」
いち早く状況を察したゲレが二人の少女に逃げるように促し、離脱を確認しながら周囲を窺う。
「ありがとう、うちは春日歩て・・・」「自己紹介は後にするです」「ひっ、ひぇぇっ!」「ま、待ってくれよトシヤー!」
遠ざかる二人を横目に確認する間に、男二人も慌てて逃げていく。
だが何者かはどちらを追う様子も無く、時折頭上を横切りながら身を潜めている。
「ちぇっ、あっちの男でも追っかけて行きゃいいのに・・・」
ゲレはゆっくりとポケットから通信端末を取り出し、状況を伝えるべくコールする。
「もしもし、ぴよ・・・ひぇっ!?」
が・・・その隙を突き、頭上から眼前へ怪人が素早く降り立ち腕を振り上げる!
「ぴよっぴよっぴっ・・・うわっ! ひっ!?ひっひっひよさんっ! オオオオルフェノク・・・じゃないっぽいけど何かがっ!」
怪人の攻撃を避け、逃げ惑いながら何とか状況を伝える。
『こっちでも確認してます。でも別の場所にも敵が出てて・・・とりあえず変身してみて下さい』
「へっ? 変身って・・・わぁっ!? 俺って一人で変身・・・うおぉぉっ!?危ねぇっ!」
『出来ます!一応・・・・・・とにかくそのままじゃ危険ですし』
「わ、わかった!」
ゲレは必死で立ち上がり、怪人の攻撃の合い間を縫って通信端末に起動キーを入力!
そのまま腰に押し当てると、端末はバックルへと変化しベルトが伸びて腰部に固定される!
「よくもやってくれたな! お陰であの子達からお礼も・・・どわぁっ!? ま、まだ喋ってるだろ!?
ヘッ、ヘンシ!」
指を突きつけ怒りを口にするゲレを意に介した様子も無く怪人は攻撃を続け、ゲレは慌てて変身する。
白と薄灰を基調とした飾り気の無い装甲が全身を包み、ゲレを戦う姿――仮面ライダーへと変えてゆく。
「行くぞ怪人、えーと・・・多分見た目蝙蝠っぽい男! 最近ただでさえ良い事ないんだから覚悟しろ!!」
ゲレは腰から武器を引き抜き鉈に変えると、色々と理不尽な怒りも込めて一気に攻撃を仕掛けた。
「ぐはっ・・・ぜぇっ、はぁっ・・・な、なんでっ? 何で倒せないんだこいつ!!」
ゲレの予想に反して、単独での変身は他の形態に遜色のないものだった。
基本はセンとの合体状態と同じ、多少パワーもスピードも劣ったが、何とか誤魔化せる程度・・・の筈だった。
だが・・・。
「なんでっ! このっ!! 爆発とか! 消滅とか! しないんだっ!?」
倒れた仮称蝙蝠男に対し、さらに鉈を振り上げ叩き付け、だが何度繰り返しても敵は立ち上がった。
ただ消耗していくばかりのゲレを見て、敵は飛び回ることもせず、嘲笑うように攻撃を受けてはまた立ち上がる。
「畜生・・・やっぱり・・・やっぱり俺じゃ彼女達みたいには・・・」
果ての見えない戦いに、気力が萎え膝が折れる。軽く殴り飛ばされただけで地面に転がり、ベルトが外れる。
身体にはまだ力が残っている。だが立ち上がれない。再び変身する気力がない。
(俺の想いくらいじゃパン子達に届かないのかな・・・。だから勝てない・・・?護るなんて無理なのか・・・?)
そう、先日から感じていた事、わかってしまった事。自分の決意は彼女達に比べてとてもちっぽけだ。
自分達の世界を、多くの人々を、大切な者達を・・・全て失ってなお、護る為に戦い続ける。それに比べて・・・。
否、断じて否であると。そう自分に言い聞かせても信じても、押し隠した筈の不安が次々首を擡げて来る。
そんなゲレを見下ろし、抵抗する意思と看做したかゆっくりと腕を振り上げる蝙蝠怪人。
ゲレは視界の隅にそれを捉えつつも逃げることが出来ず・・・・・・。
―Screw…Blizzard…『Blizzard Gale』― 敵の姿が一瞬にして凍り付き、白い氷に覆われていく。
・・・と、思った瞬間・・・氷は砕け散り、敵は砕け散りこそしないが相応に身を砕き裂かれ倒れ伏す。
―カシャッ― っと小さな音を立て、怪人のベルとバックルと思われる部位が開き、何かの記号が見える。
「駄目だ・・・でもまたすぐに・・・」
思わず呟いて、その時になってゲレはようやく・・・怪人に攻撃を加えたであろう人影に気がついた。
夜闇の中、姿ははっきりとは見えない。
だが、良く見知った彼女達にどこか似た雰囲気を持つその姿。
緑色の装甲に鎧われた身体。装甲に覆われた頭部にはマスクと涙を知らない大きな瞳の意匠。
何よりも、怪人を倒し今自分を――人を救った、その姿はまさしく・・・。
「仮面・・・ライダー・・・?」
- 2008/11/18(火) 19:39:44|
- 仮面ライダーゲレ
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